第七章 新外相ムラヴィヨフ伯
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第三段 新宮相フレデリックス男
宮内大臣ウォロンツォフ伯は解雇され、その後継にフレデリック男爵が任命されました。
毒にも薬にもならない人
ウォロンツォフ伯の後任として、彼の次官であったフレデリック男爵が宮内大臣に任命されました。
彼は、立派な生い立ちの良い、潔白な人間でした。
しかし彼はただそれだけの人間でした。
フレデリック男は、その潔白な点、生い立ちの良い点から言えば騎士であるとさえ言えました。
何等の知識も、能力も、自分の意見をも持たず、陛下に対する勢力は全然ありませんでした。
また彼は、国事に関する会議には役に立たなかったのでした。
宮内省の事務を充分に管理する事さえ出来なかったのでした。
陛下の性質から言えば、こうした宮内大臣こそ、陛下にとって適当な人物でありました。
フレデリック男が宮内大臣に任命されると間もなく、ウイッテ伯は陛下から一つの指令を受け取っていました。それは宮内省の予算に関する確定事項でありました。
つまり前宮内大臣ウォロンツォフ伯によって編成されたものでありました。
従って、それに対するウイッテ伯の反対意見が陛下を通じてウォロンツォフ・ダシコフに何等かの面白からぬ結果を及ぼしたものでないのは明白でありました。
ウォロンツォフ伯の後継者として、フレデリック男爵が任命されました。
フレデリック男は、政治家ではなく、後方事務方のプロフェッショナルのようです。
政治家でない人物を大臣に据えても政治は良くならないでしょう。
フレデリック男は、政治思想もなく宮内大臣などになってしまえば、皇族周辺の人たちに利用されるだけでしょう。