第四章 酒類専売制度の実施
第三段 フランス財務官の意見
ウイッテ伯が推し進めている酒類専売法をフランスの役人が視察しました。
ですが、専制国家でないと不可能であると言っているそうです。
専制国家と共和制国家
フランス共和国大統領フォールの一行がロシアへやって来た時、フランス大蔵省視察官の一人は、フォール大統領が立ち去った後もロシアに居残って、酒類専売政策が施行されている地方に出かけるウイッテ伯の一行に加わり、スモレンスカヤ県及びモギレフスカヤ県を回りました。
視察終了後、ウイッテ伯はこのフランス人に対して酒類専売事業についての意見を聞いてみました。
この人は尊敬に値する活動家でグラン巣の旧貴族でした。
また事実、彼はモンテペロル伯の親戚でした。彼はフォール大統領の命によってウイッテ伯の随員中に加わり、その視察調査の結果によってはフランスにも酒類専売を実施しようとする目的でした。
ウイッテ伯の質問に対して彼は非常に賢明な回答をしました。
「この改革は国家的見地から見て立派なものであり、最も好ましき結果をうる事が出来るであろう。
フランスでも必ず好成績をうるに違いあるまい。
しかしその実施に際しては、一つの条件として専制君主政体が必要である。」
実際の所、もしアレクサンドル三世帝があの様な性質を持っていなかったとすれば、ウイッテ伯と雖も決してこういう改革を行うことは不可能でした。
議会主義の発達した国家、別けても共和政体の国家では、かかる改革は思いも及ばぬ事でした。
なぜならば、そういう国家ではこの様な専売法はただ上流富裕階級の権利を齎すのみで、議会は決してこれを通過させる筈がないからでした。
後年、ウイッテ伯が比較的長い間フランスで代議士選挙の場合に一番に活動している分子は、あらゆる種類の酒店の持主でありました。
フランス大統領フェリックス・フォールの任期は1895年から1899年でした。
どの時期にロシアへやって来たかは判りませんでした。
ウイッテ伯の考える酒類専売法は、アルコール依存症の国民を減ららす為の方法としていました。フランスの役人がロシアの酒類専売法の視察したのは、アルコール依存症の撲滅の為ではなく、単に税収確保のためだと思います。
酒類専売法が専制国家であればうまく行くのに、共和制国家ではなぜ富裕層だけが儲かるのかがよくわかりません。
