ウイッテ伯回想記「日露戦争と露西亜革命」その022

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第二章 李鴻章と東支鉄道利権交渉

ハルピン駅東清鉄道 
ハルピン駅 東清鉄道 時代不明 絵葉書  

第七段 皇帝の李鴻章謁見と締約

ウイティ伯は、ついに満州にシベリア鉄道を引き込む協定を結ぶのに成功しました。

最後の一押しはニコライ帝

李鴻章は容易にウイッテ伯の説に応じませんでした。
何かしら故障を並べて所説に応諾しませんでした。
ですが、彼の語気にからは、ニコライ二世帝がこれを望まれるのならば、彼は必ず応諾するであろうと看て採れたのでした。
ウイッテ伯は、ニコライ二世帝に謁見して交渉の経過を言上し、且つ近日じゅうに李鴻章に謁見を賜んことを請うのでした。


その後、何かの機会でニコライ二世帝は、群臣に謁見を賜った事が有りました。
ウイッテ伯が陛下の前に近づいた時、陛下はウイッテ伯と握手をしながら小声で、「李鴻章には逢って話をして置いたよ」と言いました。


ウイッテ伯は、その後まもなくして李鴻章と会見しました。
いろいろ交渉した末、清国との秘密協約について大要次の様な原則案を作る事にこぎつけました。


1.清国はロシアがチタ=ウラジオストックを最短距離をもって連絡する為に、清国の領土を貫通して鉄道を敷設する事を承諾する。
しかしこの鉄道は私設会社の手によって建設さるべきことを必要条件とする。


2.この鉄道の敷地として相当の付属地を設定する。この付属地内においてはロシアが主人たるべきこと。
その付属地がロシアの支配に属する以上、ロシアはその地域内においては自己の警察を有し、事故の守備兵を配置する自由を有する。この付属地の地域は鉄道の運用に必要な程度に従って設定するが、同地域内においてはロシア側、正しく言えば東支鉄道会社は、主人たる地位を占める。
鉄道線の方向はなお調査の上最後の決定をするが、なるべくチタ=ウラジオストック間を直線的に連絡するに努力する事。清国は鉄道の建設並びにその運用に関しては何らの責任を負わぬ。


一方、ロシアは日本の侵略的行動に対して清国を防護する責任を持つことになったのでした。

協約の原案を取りまとめた後、彼らは戴冠式に参加するべくモスクワへ向かうのでした。

李鴻章は打ち解けて会話を交わす間になったとしても、ウイッテ伯の話をすんなりと受け入れませんでした。
協約を交わす気持ちにさせたのは、ニコライ二世帝に謁見したのが後押しとなった様です。
李鴻章も国は違えども帝国の臣民の為なのでしょうか。権威には弱かったように思えます。

ウイッテ伯の言うところの李・ウイッテ協約の原案は次の通り。

  • チタ=ウラジオストック間を最短の距離で鉄道路線を開通する。
  • 施工会社は私営会社とする。(国家事業とはしない。)
  • 鉄道に必要な敷地を、鉄道付属地とする。
  • 付属地はロシアの管理地とし、その中の警察・警備兵の配置はロシアの自由とする。
  • 鉄道路線経路は、調査しつつ決めてゆく。
  • 鉄道の建設並びに運用に関して、清国は何等かの責任を負わない。
  • ロシアは日本の侵略的行為に対し、清国を防御する責任を待つ。

ウイティ伯は、鉄砲でドンパチせずに他国に領地を広げることに成功する一歩手前まで来ました。

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