ウイッテ伯回想記「日露戦争と露西亜革命」その021

ロシアの歴史 タイトルロシア

第二章 李鴻章と東支鉄道利権交渉

満州鉄道路線図、1897年ごろ
満州鉄道 1897年ごろ   on wiki

第六段 李鴻章と交渉に入る

ウイッテ伯は、ロシアが清国の領土保全についていかに援助を与えているかを説明し、
そして、これからも清国の為に尽力できる様にするには鉄道で欧露とウラジオストックを結ぶ事であると説きました。

ウイッテ伯の説得文句

ウイッテ伯は、或る日の李鴻章との会見において、まづ今回ロシアが清国に与えた援助が、
いかに彼の国の為に有利であったか、清国の領土保全という主義がいかに彼の国の勢威を保持する上に有効であるかを説きました。
また、ロシアが一たび清国の領土保全を宣言した以上、それは将来永久に持続して変わることなき意志であることを明言するのでした。


「しかし、この清国の領土保全を維持知るためには、我々が必要に応じて清国に助力を与えうる地位に置かれねばならない事は自明である。
それには第一に、彼我の間に完全は交通路、すなわち鉄道を施設する事を必要とする。
この設備を欠く間はロシアは清国の為に有利な友邦とはなりえない。
ロシアの兵力は常に欧露に集中されているのであるから、一朝有事の際に清国の救援に赴こうとするには、欧露とウラジオストックとの両方面から兵力を必要の地点に移動する必要を生ずる。
ところが現時の様に交通機関が不備な状態ではどうしても有効且つ敏速な活動を為しえない。
たとへば、現に日清戦争の際にロシアが万一の場合を顧慮してウラジオストック駐屯兵を吉林方面に移動しようとした時の如きも、道路の無いためにその兵は戦役の終わる頃に至っても、まだ吉林に到着し得なかった。
であるから、清国の領土保全を確保するため当面の急務は鉄道の建設である。
その鉄道は最短距離をもってウラジオストックに到着するものであることを要する。
それは蒙古満州の北部を通過することになる。
そうしてこの地方を貫通する鉄道は啻に軍事上の必要に応ずるのみでなく、露清両国の繁栄を増進する機関となるであろう。
それは鉄道の敷設は決して日本の反対を惹起すことはあるまい。
日本はすでに久しくヨーロッパの文明を受け入れ、特にその科学を利用する事を怠らないものである。
従ってこの鉄道にってヨーロッパ諸国に接近しうることは日本の悦ぶ所であって、決して険悪する所でないのは明らかである。」

ウイッテ伯は、李鴻章と交渉事をしたいが為に、彼が他国の人間と接触しない様にむかいの物を差し向けたりしました。交渉に時間が掛かると考えたためでしょう。


交渉の目的は、シベリア鉄道を黒竜江沿いに路線を敷設せずに最短距離で清国の領地である満州を突き抜け、ウラジオストックに至るルートを作る事でした。


口説き文は
今回はロシアが清国の領土保全に尽力をつくした。
これからも継続して援助する用意がある。
そのためには、ロシアが手助けしやすい環境を用意する必要がある。
その環境は、鉄道の路線を速やかにウラジオストックに通すことである。
シベリア鉄道が北満州を貫通すれば、時短できる。
これは、ロシア・清国ともに繁栄する機関になるのである。
他国の事など気にとどめる必要はない。日本などは返って喜ぶはずだ。


清国内に他国(ロシア)の管理する鉄道を通す事は、領土保全に反したりしないのでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました