給食の時間 008 食用昆虫と、どうやって付き合うか

旧私欲の時間のタイトル給食

人類の「三大欲求」と言えば「睡眠欲」、「食欲」、「性欲」の3つ。
その中の「食」について考えてみよう。

食用昆虫と、どうやって付き合うか

前回までで、甲殻類の食用昆虫は食品表示では、アレルギーに対して標準では警告されないことがわかりました。なので、アレルギー持ちの人は個別で注意する必要があるのでした。

外国は、どうやって食用昆虫と付き合っているか

日本と外国では、食用昆虫の扱いが少々違います。それを見てみます。

欧州の食用昆虫の扱い

内閣府食品安全委員会が公表した資料です。

〈欧州食品安全機関(EFSA)〉食品及び飼料としての昆虫類の生産及び摂取に係るリスクに関する科学的意見書について一般向け広報資料を公表
2015年10月8日報告資料より

EFSAは、食品及び飼料として飼育される昆虫類の使用に関連した潜在的な生物学的ハザード、化学的ハザード、アレルゲン性及び環境へのハザードを特定するリスクプロファイルにより、この問題に対処した。
また、EFSAの科学的意見書は、これらの潜在的なハザードと動物性たん白質の主要な供給源に関連した潜在的ハザードを比較している。


EFSAの科学的専門家によると、昆虫類由来の食品製品及び飼料製品に生物学的ハザード及び化学的ハザードが存在する可能性は、
(1)飼育方法、(2)昆虫類に何を給餌するか(飼育培地)、(3)どの成長段階で昆虫類を収穫するか、(4)昆虫の種、(5)更なる処理方法、
に依存するという。


食品及び/又は飼料としての用途に最も大きな潜在能力があるとEU域内で報告されている昆虫種には、イエバエ類(houseflies)、ゴミムシダマシ類(mealworms)、コオロギ類(crickets)及びカイコ類(silkworms)が含まれる。
国際連合食糧農業機関(FAO)を含めて多数の機関が食品及び飼料用に昆虫類を使用する可能性について研究しており、EU加盟3か国(ベルギー、フランス及びオランダ)は、食品又は飼料としての昆虫類に関するリスク評価を行っている。

「ハザード」というのは、「危険の原因・危険物・障害物、潜在的危険性」。

まず食べ物として危険があるかどうか調べています。
次に量産する手段で、汚染されないか調べています。

欧州の食用昆虫の扱い2018年

内閣府食品安全委員会が公表した資料です。

欧州食品安全機関(EFSA)〉新食品としてのヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)についてリスクプロファイルを公表
2018年9月21日報告資料より

リスクプロファイルでは、野外コオロギ繁殖場と対照して、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Points)及びGFP(good farming practices)に基づく屋内ヨーロッパイエコオロギ飼育システムを想定している。
利用した方法論には文献スクリーニング、可能性のあるハザード特定が含まれ、更に、得られたエビデンスに対して関連のある算入基準を組み込んだ。
これらの基準には、農場はOne Health原則(訳注:人の衛生、家畜の衛生、環境の衛生の関係者が連携して対策に取り組むべきであるという理念)に向かうべきとの理念のもと、ヨーロッパイエコオロギの全生存期間に渡り、家畜衛生及び食品安全の側面が含まれる。
データ不足の場合は、直翅目属の近縁種(バッタ、イナゴ、他種コオロギ等)の対応するエビデンスを利用している。
しかしながら、動物衛生と食品安全において、著しいデータギャップが存在している。

「コオロギ」を食品として、登録しようとしが、資料不足で不採用であったようです。
生産工程で、安全確認できないところがあったようです。

欧州の食用昆虫の扱い2021年

JETRO 日本貿易振興機構の資料です。

欧州食品安全機関、初の昆虫由来の食品の安全性評価を公表
2021年1月18日

欧州食品安全機関(EFSA)は1月13日、「新規食品(Novel Food)」として、EU域内での販売認可の申請があった乾燥イエロー・ミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)について、製造事業者が提案する使用方法や容量を守る限り、食品として安全性に問題はないとする評価報告書を公表した。


ただし、EFSAの評価報告書では、留意すべき点として、甲殻類などにアレルギーを持つ人が、イエロー・ミールワームにもアレルギー反応を起こす可能性を指摘している。この点について、IPIFFは、生産者側も昆虫食品によるアレルギー・リスクの軽減につながる詳細なエビデンスを積み重ねており、EUの関係機関に対して、消費者に周知するための昆虫由来の食品独自の表示方法の策定も提案しているとした。

欧州初の食用昆虫販売認可の報告です。最初の申請から4年かかってます。4年前と同じ業者とは限りませんが。

欧州の食用昆虫の扱い2022年

内閣府食品安全委員会が公表した資料です。

〈欧州委員会(EC)〉欧州連合(EU)市場向けの食品成分として三番目の昆虫となるヨーロッパ・イエコオロギ(Acheta domesticus)の認可を公表
2022年2月11日報告資料より

欧州委員会(EC)は2月11日、欧州連合(EU)市場向けの食品成分として三番目の昆虫となるヨーロッパ・イエコオロギ(Acheta domesticus)の認可を公表した。


概要は以下のとおり。
 ECは2月10日、ヨーロッパ・イエコオロギを新食品としてEU域内で市場投入することを認可した。ヨーロッパ・イエコオロギは、乾燥形態の黄色ミールワーム(2021年7月に認可)及びトノサマバッタ(2021年11月に認可)の認可に続いて、三番目に認可された食用昆虫である。
当該昆虫は、冷凍又は乾燥形態及び粉末化した形態で、昆虫の個体全体が利用可能である。


 当該認可は、申請企業が提出した用途のもとで、当該昆虫の摂取が安全であると結論付けた欧州食品安全機関(EFSA)による厳格な評価の結果を受けて、2021年12月8日に加盟国によって承認された。当該新食品を含む製品には、アレルギー反応を誘発する可能性を知らせる適切な表示をする。

ドイツの食用昆虫の扱い

内閣府食品安全委員会が公表した資料です。


〈ドイツ連邦食糧農業省(BMEL)〉食品に含まれる昆虫に関するQ&Aを公表
2023年2月2日報告資料より

食品として扱える昆虫
・2021年6月:ミールワーム(Tenebrio molitor)、乾燥幼生
・2021年11月:トノサマバッタ(Locusta migratoria)、冷凍/乾燥/粉末
・2022年2月:ヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)、冷凍/乾燥/粉末
・2023年1月:ヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)、部分脱脂粉末
・2023年1月:ガイマイゴミムシダマシ(Alphitobius diaperinus)、冷凍/ペースト/乾燥/粉末
の5品目です。

食品として扱うには許可が必要
欧州委員会への新食品としての承認申請の義務がある。
新食品は欧州食品安全機関(EFSA)による厳格な科学的評価の対象となる。EFSAは、入手可能な科学的知見を審査する。申請者はこのために申請する製品の健康への影響に関する全ての関連情報をEFSAに提示しなければならない。新食品がヒトの健康への安全性上のリスクを示さなかった場合のみ、欧州委員会は認可する。

昆虫を含有する、あるいは昆虫から作られる食品は特別な表示が必要か?ドイツでは誰が管理するか。
昆虫を新食品として認可するための条件は、消費者が新食品を明確に識別できるようにする食品の呼称の表示等、特別な表示要件を含む。
一般食品表示法の要件には、包装済み製品には成分リスト掲載しなければならない等の規定があり、これにより、食品の性質及び成分に関し、消費者への明確かつ理解し易い情報の提供が確保される。この一般食品表示法の要件を満たすと共に、食品成分としての昆虫の使用に関しても、同様に情報を提供する必要がある。
特に、甲殻類や軟体動物類との交差反応を示す可能性もあるため、昆虫の認可条件としてアレルゲン情報についても定められている。
食品法規則の施行、及び昆虫に関する上記の表示要件の管理は、連邦州の管轄当局の責任となる。

例えば、ヌードルに昆虫を加えて提供した場合など、飲食業は、昆虫を使った食品、あるいは料理をどのように表示しなければならないか?
メニュー表などに自主的に書面で情報を提供する場合、EUの一般食品表示法の規則に則って正確かつわかりやすく、消費者に誤解を与えないようにしなければならない。昆虫粉末のように消費者が予期しない成分が、例えば、ヌードルなど身近な料理に使われる場合、メニューなどの書面での情報に記載されていることを前提とする。そうでない場合、誤解を招く可能性があり、それにより法的に容認されなくなるためである。これも連邦州の管轄である。

昆虫もメニューにアレルゲンとして表示する必要があるか?
許可された昆虫に関する特別な法的規則により、表示の一部としてアレルゲン情報が必要になる。規則では、パッケージ商品とばら売り商品の区別はない。飲食店では定期的にメニュー表示が改められている。ここでも、食品法規則の実施は連邦州の任務である。

シンガポールの食用昆虫の扱い

内閣府食品安全委員会が公表した資料です。

〈シンガポール食品安全庁(SFA)〉昆虫の規制枠組みに関するファクトシートを公表
2022年10月27日報告資料より

「食品の安全性確保」
昆虫を含め、シンガポールにおいて摂取される食品の安全性は、SFAの優先事項である。
SFAは、国内生産された昆虫及び輸入された昆虫に対する消費者の安全性確保に向けて、堅牢な監視体制を整備する。食用・家畜飼料用の昆虫の輸入または養殖を行おうとする企業が遵守すべき要件として、輸入された昆虫が食品安全管理規制に従う施設で養殖されていることを証明する書類の提出、及び昆虫の飼育または食餌に使用する飼料(substrate)が有害物質に汚染されていないことの確保なども策定する。
食用としての歴史をもたない昆虫種は新食品とみなされ、新食品規制枠組みに従い、企業は販売許可を受ける前に、SFAのレビューに向けた安全性評価の実施・提出を要求される。

「表示要件」
昆虫を原材料として含む包装済み食品を含め、包装済み食品を販売する企業には、製品の包装に製品の本質(true nature)を表示することが要求される。昆虫製品は、市場において入手可能な他の食品と同様に、サンプリング及びテストを含むSFAの検査・監視プログラムの対象となる。食品安全規制に適合していないことが判明した食品は、販売を許可されない。

「公開協議」
昆虫産業は新興のものであるため、我々は新たな科学的進歩に基づいて規制アプローチを定期的に見直し、その妥当性と堅牢性を維持する。SFAは食品及び動物飼料業界、並びに利害関係者に対し、昆虫及び昆虫製品の輸入条件及び付加的なプレ・ライセンス要件に関する公開協議への参加を呼び掛ける。

食用として許可される昆虫は、食用として知られた歴史をもつ特定の種に限定される。
・バッタ目(=直翅目、Orthoptera)
Acheta domesticus(House cricket、ヨーロッパイエコオロギ)
Gryllodes sigillatus(Banded cricket、カマドコオロギ)
Teleogryllus testaceus/Teleogryllus mitratus(Gryllus testaceus)(Common/field cricket)
Gryllus bimaculatus(Black/field cricket/ Twospotted cricket、フタホシコオロギ)
Locusta migratoria migratorioides(African migratory locust)
Schistocerca americana gregaria(American desert locust)
Oxya japonica Thunberg(Grasshopper、ハネナガイナゴ)
・甲虫目(=鞘翅目、Coleoptera)
Zophobas atratus morio(Superworm beetles/ Giant mealworm beetle/ King mealworm、ツヤケシオオゴミムシダマシ)
Tenebrio molitor 幼虫段階のみ(Mealworm、チャイロコメノゴミムシダマシ)
Alphitobius diaperinus 幼虫段階のみ(Lesser mealworm、ガイマイゴミムシダマシ)
・チョウ目(=鱗翅目、Lepidoptera)
Galleria mellonella(Greater wax moth/ Honeycomb moth、ハチノスツヅリガ)
Achroia grisella(Lesser wax moth、コハチノスツヅリガ)
Bombyx mori 蛹虫(繭は含まず)及び幼虫(Silk moth/ silkworm、カイコ)
・コガネムシ科(Scarabaeidae)
Protaetia brevitarsis 幼虫段階のみ(Whitegrub、シラホシハナムグリ)
Alomyrina dichotoma 幼虫段階のみ(Giant Rhino beetle grub、カブトムシ)
・ハチ目(=膜翅目、Hymenoptera)
Apis mellifera(Western honey bee/ European honey bee、セイヨウミツバチ)

まとめ

欧州・シンガポールでは、昆虫は標準的な食品とみなしてなく、「新規食品」という新しいジャンルの食品として扱っている。
そしてそれを食品として扱うには、安全性を証明しなければならないようである。
また、食品として認められても、「食用昆虫」であることは必ず明記する。使用できる量を限定する。

外食産業で使用する場合でも、メニューに使用している事を表記する。などと決められている。「新規食品」を食べたくない人への権利を守っている。

日本国内では現在、食用昆虫に対して安全について研究・議論がほとんどされていない。アレルギーに気を付けないといけない人は、しばらく食べ物に注意が必要なのだと思う。

日本産食用昆虫に国の安全認証が無いと、欧州・シンガポールへの輸出は難しいのではないだろうか。農林水産省は食用昆虫の輸出は考えてないのかもしてない。

今回はここまで。

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